Arrnimal High School 第一章 「ワンダーランドと不思議の学園」
![]()
少し薄暗い室内。
ここは放課後、誰もが近寄らない校長室。
その部屋の中で、淡々と会話が紡がれていた。
「私にはわかりません。
…今更、失礼を覚悟で言わせていただきますが、何故彼女の入学を許可したのですか?
このままでは……彼女はココに打ち解けてしまいます。」
校長の有能な秘書でもあり、ある意味お世話役とも言えるラファが
校長を真剣に見つめて言う。
校長はただ無言でラファを見つめていたが、
ため息混じりに息をひとつつくと、静かに切り返す。
「……キミは嫌だったのかね?」
「そういう訳ではありませんが…。」
表情を崩し、言葉を濁すラファから視線をはずし
校長はカタンと席から立ち上がり、窓の外を見上げる。
そして静かに、囁くように告げた。
「時は動き出した。もう……」
――止まる事はない……。――
第5話 とまらない時計(とき)
「やっぱり手っ取り早く探すには、書籍を辿った方がいいと思うの!」
「そ、だね……。」
アリスの気迫に少し引け身をしながら、2人は図書館へとたどり着いた。
アーニマル学園の図書館は、半端なく広く
校舎とは全く違って、歴史を感じさせた。(校舎は改築。)
「へぇ〜…広いのね、図書館て。私の世界の倍くらいはありそうだわ…!」
「うん、この学校自慢の図書館なんだよ。…じゃあ、手分けして探そうか」
「うん!!」
2人は時間を決めて待ち合わせると、それぞれの方向に向かった。
***
「はぁぁ〜……。」
なかなか思った本に出合えず、アリスは大きくため息をつくと
コトンと本棚に寄り掛かった。
最初から、そう簡単に帰り方が見つかるとは思っていなかったが
やはり、同じ作業をし続けると
自分が追い込まれていく気がしてならない。
そして頭の中に響くのだ。
声が。
『そんな事して、意味があるのか?』
『どうせ帰れないんだから、諦めちゃえよ。』
『そんな面倒な事しなくても、他にも方法があるんじゃないの?』
ブンブンと頭を振って、もう一度手元にあった本を開く。
しかし、それもハズレで。
気を落としたアリスの背後から、聞いた事のある声が聞こえた。
「そんな事してても時間の無駄じゃないの?」
「あ……メイ、ちゃん…。」
「ごきげんよう、アリス先輩。」
ニッコリと笑うとメイはアリスの手に持っていた本を取った。
「こんなデタラメに本読んでたって時間の無駄ね。…本当に帰る気あるの?」
「それは……もちろん!」
本を元に戻すと、ため息混じりにアリスを見やってメイは口を開く。
「アンタ見てると、本当にイライラするのよね。
自分がどうしたいのか…迷ってるんじゃないの?」
アリスは顔を俯けて言った。
「そう…かもしれない。元の世界に返っても
きっと、ツマラナイ毎日を過ごすだけ。そんなの嫌なの。
…でも、向こうの世界に大切な家族もいるの。憎たらしいけど…家族だから。
だから、帰らなくちゃいけない。メイちゃんにもいろいろ悪いことしたし…
…だから、よろしくお願いします」
へこり、と頭を下げると、メイは困ったように告げた。
「別に…そういうつもりで言ったわけじゃないのよ。
まぁ…早く帰るならその方がいいし……手伝ってあげるわよ、私も。」
「メイちゃん……!!!」
照れたようにそういうメイに、アリスはニコッと微笑んだ。
そして二人で本を探す様子を、
影からうさぎときんぱちが笑って見やっていた。
「あれぇ〜きんぱちだ。」
「げ、きんぱち先輩……。」
「やっほぅ、アリス☆それにメイ〜…げ、とはなんだ!げとはぁ〜!!」
苦笑しながらうさぎは『僕もきんぱちと合流したんだ』と告げた。
結局大した成果は挙げられず、その場は解散となった。
「焦らなくて大丈夫だよ?また頑張ろう?」
ぽんぽん、とうさぎがアリスの肩を叩く。アリスは笑うと元気よく言った。
「うん!私は大丈夫よ、皆がいるから!!」
***
「……何も聞かないんだね…?」
少し間を空けて、校長がそう呟く。
ラファは呆れたように、校長を見やって。
「当然です。私は彼女を追い返そうとしてあの話をさせていただいたわけではありません。
校長が『時は動き出した』と仰るのならばそうなのでしょうし、
時間が過ぎれば、全てが良い方向に進むやもしれません。
私には発言権はございませんので、お好きになさってください。
……でも…。」
「でも…?なんだね?」
校長は、話を途中で切ったラファを不思議そうに見つめる。
ラファは冷静な口調を崩さずに、ただ告げた。
「でも…デスクの上はちゃんと毎日整理をしてください。
あぁ、もう…これは昨日お渡しした書類ではないのですか?!
……明日の職員会議が終わるまでに片付けて置いてくださいね…?」
物凄い剣幕でそう言い残すと、ラファは静かに戸を閉めて校長室を出て行った。
廊下には彼女の靴の音。
部屋には校長の『考慮しておくよ…』という呟きだけが響いていた。
「『全てが良い方向に進む』…ねェ…。そう上手く、事が進むといいんだけど…。」
一人残った校長室で、校長がポツリとそう言葉を漏らした事を
誰一人、知る事はなかった。
(C)gekka