Arrnimal High School 第一章 「ワンダーランドと不思議の学園」
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夕焼け空の下、伸びる2人分の影。
硬く握りしめられた手は、逸れる事を拒むかのように
堅く、握られていて。
直に伝わる体温を感じながら、自分でも思ったより冷静に
異世界でのスタートをきった。
第2話 終わりを告げる始まり。 前編
「ただいま〜vv」
やけにウキウキとした口調で自宅と思われる家に入っていくうさぎを
アリスはまじまじと見つめていた。
ここは異世界。
今まで自分が住んでいた世界とは、大きく違う点があるのだから
帰ることができる日までは、順応して楽しもう…そう思って意気込んだものの、
案外、異世界は…普通の住宅地だった。
「お、お邪魔しまぁ〜す……」
普段には無いような気弱さで家の中へと入る。
うさぎはそのままリビングへとアリスを通した。
そして辺りをキョロキョロと見回して。
「メイ〜帰ったよ、メイ!…いないのかな?」
アリスは自分の目の前の机にある、やけに可愛い便箋を見つけ、うさぎに手渡す。
うさぎはそれを読むとポケットにしまい、アリスに言った。
「『メイ』って僕の妹なんだ。今日は友達の家に泊まりに行っていないけど…
とてもいい子だから…すぐに友達になれると思うんだ!!」
「メイ…ちゃん?」
すぐに帰れないとはいえ、男の子の家に厄介になる…そう思っていたアリスは
女の子がいることに安心してか……うさぎにニコッと微笑んだ。
***
次の日…アリスにとっては『アーニマル学園』初登校日になるわけだが
それが一番大変だった。
うさぎが貰ってきてくれた制服に慌しく着替えると、
うさぎの後に続いて学校へと向かった。
……そうして今に至るわけだが、うさぎに悪いと思い
一人で職員室に向かったのがまずかったらしく。
異世界には珍しい人間だからだろうか…。
じろじろとアリスの事を生徒達が横目で見て通り過ぎてゆく。
(やっぱり一緒に来てもらえばよかった……。)
アリスの周りは見渡してみる限り、異世界なだけはあるのか…『人間』…ではない。
人の形はしているものの、その体からは動物の耳が生え。
無我夢中に職員室へと向かった。
職員室に入ると校長が立っていて…アリスに担任を紹介する。
担任はいかにも、という感じの美人で、短いスカートからすらっとした
足が伸び、胸元は大きく開いていて、耳は…猫のようだった。
「あなたがアリスさんね?…校長から事情は聞いています。私はあなたの入るクラスを
受け持つ『チェシャ』というものです。」
「……初めまして、先生」
二人は少しして教室の方に向かった。
***
広い校内を歩き出して暫くたった頃、
窓の外を見上げていたチェシャは、ふいにアリスに言う。
「あなたは……この世界のこと、どれくらいまで知っているの?」
アリスはただ首を横にふって。
「じゃあ…帰りたい?」
アリスはコクリとうなずく。
「じゃあ…帰り方は、知っているのかしら?」
黙り込むと、クスクスと頭の上から微かな笑い声。
ムッとチェシャの方を見上げると、チェシャは穏やかに笑っていた。
「なら……帰り方、教えてあげましょうか?」
「え……。」
2人の沈黙の時間を埋めるように、開いていた窓から風が吹き入ってきて。
「教えて欲しかったら、放課後歴史資料室に来なさい。…いろいろ教えてアゲル」
そう言ってまたクスクスと笑うと、教室に入っていった。
アリスは少しの間、呆然とチェシャを見やっていたが
慌ててチェシャを追いかけて教室に入った。
***
ざわざわと騒然とする教室で、アリスは一人俯いていた。
教室にうさぎの姿を見つけて一安心したのもつかの間、
席に通され聞こえるのは…声、声、声。
『ねェ…あの子、人間なんだって』
『なんで人間の生徒がこの学校に?』
『やだァ〜どっかにコネでもあるんじゃないの?』
『いい根性よねー』
クスクスと聞こえる笑い声。
居た堪れなくなって、アリスがぎゅっと瞳を閉じた…その時だった。

バァンと大きな音がして隣の席の少年が立ち上がり。
「さっきから聞いてりゃ、グダグダうるせぇよ!
転校生を初日から、からかう方がいい根性してるんじゃねーの?」
う…と陰口を言ったいた少女達は口をつぐんで。
それと反対に、アリスは反射的に顔を上げた。
少年はニカッとアリスに笑うと、はきはきと告げる。
「俺、キンシィパティ。長い名前だから皆、『きんぱち』って呼ぶんだ。
…なんだかんだ言ってるけど、いいクラスだから…歓迎するぜ!
よろしくな、アリス!!」
「うん……ありがと!…きんぱち」
アリスがにっこりと微笑んでそう言うと、きんぱちは照れたように顔を真っ赤にさせて。
その様子を見て、クラス中が笑いに包まれる中
後ろで穏やかな微笑みをうさぎは浮かべていたが、
チェシャは無表情でその様子を見やっていた。
***
アーニマル学園の昼休みは少し長め。
普段よりかなりゆっくりと昼食を取っていると、教室のドアのところに人影が見えた。
その人影は…昨日であった少女。
初めてこの世界に来て話をした女の子。
……でもその瞳は…どこか自分を怨んでいるようで…。
『私……あなたみたいなヒト、嫌いよ。私から大事な物を奪うんだもの。
あなたなんか…早く自分のいた世界に帰えればいい………ッ』
蘇る昨日の言葉。
何故そんな事を言われなければならないのか…。
それをつきとめようとアリスは少女に声をかけた。
「あの……あなた、昨日の……」
そこまで言うと、少女はバッと踵を返して走り出す。
「ちょっ………待って!!」
ランチを共にしていたクラスの友達が止めるのも聞かず
少女を追いかけた。
***
「やっと追いついたッ!!」
ほぼエントランスに近い場所で、アリスは少女に追いつく。
余程の全力で走ったのか…ツインテールを上下させて、大きく息をつくと
少女はまっすぐアリスを見据えた。
大きな青い瞳に吸い込まれそうになって。
…何とか気を持ち直して、アリスは尋ねる。
「あなた…なんで私の事をそんな瞳で見るの?
私、なんかしたかなぁ…?」
少女はただアリスと視線を合わせることもなく…黙ったままで。
暫くの間の後、少女は思い出したかのように、ポツリポツリとアリスに告げた。
「私にはそこしか居場所がないのに…。
私から…お兄ちゃんを奪ったくせに……。」
「え………?」
アリスが怪訝そうに問うと、キッパリと少女はアリスに言う。
「異世界から来たくせに、私から大切なものを…お兄ちゃんの隣を奪うの…。
私、あなたみたいな人…大嫌い!!
…大嫌いよ………。」
少女の声を消し去ってしまうかのような風が
大きな音をたてて、2人を包む。
そして…アリスの苦難はまだまだ始まったばかりなのだ。