Arrnimal High School 第一章 「ワンダーランドと不思議の学園」
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「私にはそこしか居場所がないのに…。
私から…お兄ちゃんを奪ったくせに……。」
「え………?」
「異世界から来たくせに、私から大切なものを…お兄ちゃんの隣を奪うの…。
私、あなたみたいな人…大嫌い!!…大嫌いよ………。」
「隣…?お兄ちゃん……?もしかして…あなた……。」
アリスは凄く驚いた表情で少女をじっと見つめて。
ザアッと2人の間を、冷たい風が吹きぬける。
少女は重々しく唇を開くと、静かに自分の名を告げた。
「私の名前は…………メイ。」
そう自分の名を告げた少女の瞳は、何よりも冷たかった。
第3話 終わりを告げる始まり。 後編
「あなたが……うさぎの妹のメイ、ちゃん…?」
自分でもわかるように大きく唾を飲み込むと、静かにたずねる。
メイはアリスの質問に答えずに俯いて。
「今まで隣にいたのは私だけだった。私だけの場所だった…。
それをあなたが奪ったのよ?」
「べっ、別に奪ったなんてそんな……。」
確かにうさぎに突然召還されて、妹だったメイの居場所を奪ってしまったかもしれない。
けれど……何かが、違う。
彼女の言葉には、それ以上の何かを含んでいるかのようで…。
しどろもどろとアリスが答えると、2人の後ろから聞きなれた声が聞こえた。
「あれぇ〜?アリスに…メイ?」
「お兄ちゃん!!」
そこにいたのは、もちろんうさぎ。
メイは先程とは全く違って、にこにこと笑いながらうさぎに駆け寄る。
「あれ?2人は知り合いだったの?」
「今さっき会ったばかりよ。」
大嘘をついているメイを呆然と見ていると、うさぎはアリスに向き直って。
「アリス、こっちはメイ。ほら…昨日少し話した僕の妹なんだ。
これから一緒に住むんだよ?」
「よろしく、アリス先輩vv」
にっこりと含んだ笑みを向けられて……
アリスは苦笑しながら『よろしく』と答えた。
「じゃあお兄ちゃん、私そろそろ行くね」
「うん。また後で」
アリスの横を通り過ぎざまに、メイは呟くように言った。
「奪われたものは、全力で取り返す…それが私なの。…覚えといて。」
アリスだけに聞こえるようにそう告げて。
颯爽とメイは校舎へと入っていく。
「メイと何話してたの?」
不思議そうに問ううさぎに、アリスは寂しげに微笑むと
『大した事じゃないの』…と答えた。
***
放課後。
『教えて欲しかったら、放課後歴史資料室に来なさい。』
その約束どおり、アリスは手探りで慣れない校舎を歩き回り
やっとの思いで歴史資料室にたどり着いた。
「失礼します………。」
静かに扉を開いて部屋に入ると、チェシャはもう部屋にいて。
「ようこそ、アリスさん。どうぞ入って?」
ニコッと笑うと、アリスを招き入れてお茶を出してくる。
アリスは気まずいまま、話を切り出した。
「あの……帰り方、教えてくれるんですよね?」
「まぁそんな急がないで。この世界のコト…何も知らないのでしょう?」
クスクスと笑って、アリスにもわかりやすいように
ゆっくりとした口調で説明を始めた。
「正確に言うと…帰り方、の前にこの世界の事を少し話しましょうね。
聞いたかもしれないけれど…この世界はワンダーランドと呼ばれていて、
アリスさんがいた世界とは似通っているけれど少し違うのよ。
ついでに言うと、私達の世界の人があなたたちのような異世界の人や
異世界自体を呼ぶ時、それを『ファントマー』と呼ぶわ。
ワンダーランドとは…そうね、わかりやすく言うとお伽話の世界のようなもの。
だから言語の違いも時差も関係なく進むのよ。」
「あ…そう言われてみれば………。」
納得したアリスを見やってから、チェシャはにっこりと笑って説明を続ける。
「あえて違う所をあげれば……そうね、昼時間と夜時間…というものがあることかしら。」
「昼時間と夜時間……ですか?」
「えぇ。説明するには、まず季節の事から説明しないといけないわね。
この世界には恐らくあなたの前にいた世界と同じく、4つの季節があるの。
春の季節・夏の季節・秋の季節・冬の季節…それらが、1年360日周期で
1つの季節が約90日ごとにおとずれるのよ。
ちなみに春が1年の始まり、夏が1年の盛り、秋が1年の終わり、冬が1年の始まりの準備ね。」
「そうですね!同じです!!」
アリスはうんうんとうなずきながら瞼を閉じた。
今でも鮮やかに思い出される。
いまや、もう故郷と呼ばれる、元の世界。
四季折々の花が咲いたり、四季になぞらえて人々が生活をしていた。
別国では四季ごとに気候が変わる国もあると聞いたこともある。
思い出せば思い出すほど鮮明で……懐かしい、あの世界。
「アリスさん?」
チェシャが不思議そうにアリスの顔を覗き込む。
アリスは苦笑しながら手を振って。
「あ!ち、違うんです。少し思い出していて…前の世界のこと」
チェシャはクスと笑うと話を続けた。
「では本題に入りましょうか。昼時間と夜時間ね…。
昼時間とは、1つ季節を半分に分けた時の最初の45日の事を言うの。
1日のうち昼が長くて、皆が仕事や学業に励む。
夜時間は対照的に、1つの季節を半分に分けた時の後の45日の事を言うの。
1日のうち夜が長くて……世界は暗闇に包まれる。皆、慎重に過ごす時期よ。」
わかったかしら?と微笑むチェシャに、アリスは一生懸命コクコクとうなずく。
少しの間の後、アリスはふとチェシャに問う。
「あの、先生…。その『昼時間と夜時間』と、帰り方はどんな関係が……?」
そうそう、と思い出したのか、つけたしのように告げる。
「先程言ったように夜時間は暗闇に包まれるの。暗闇と同時に負が…そうね、わかりやすく言うと
悪いオーラが世界全体を包んでいて、病気になる人も増えたりするの。
だから、負の季節になるとあなたは帰れないわ。
……1回目の夜時間。だから春の夜時間が来るまでにあなたは帰らないと…次にいつ帰れるか…
またはあなたの身の安全も保障できなくなるの。」
「そ…そんな…!!い、今はどの季節なんですか?」
「今は春の昼時間よ。帰るか帰らないかはあなた次第。帰り方としてはあなたが来た時に使ったと聞く
時計を直せばいいのだろうけど…詳しくは私にはわからないわね。」
「そう……ですか…。」
「まぁ、この世界にいる間は私達学校側も
責任持って面倒を見るわ。安心してね。」
「はい…ありがとうございます……。」
アリスは頭が混乱したまま、歴史資料室を出た。
***
ぼーっとしたまま家路を急ぐ。
突然宣告された、自分の運命。
夏の夜時間までに帰らなくては…今後の保証はないと。
アリスの脳裏を最悪の事態が一瞬掠める。
ふるふると頭を振ると、家へと駆け込んだ。
その後の夕食の時も、先程の事が頭から離れず。
メイは相変わらずアリスを見据えるように見つめていて。
心配したうさぎがアリスを見やって…『どうしたの?』とたずねても
アリスはただ首を横に振ることしかできなかった。
始まりと同時に終わりを告げられ…。
混乱の中、少女はもがく。
世界は短い昼を終えたら……長い長い、終わりまでの道を進み始める。