アゲハチョウ科 |
西久保田んぼ周辺では、平地性のアゲハ類を一通り見ることができる。あずま屋の近くにあるクスノキにはアオスジアゲハが産卵に訪れ、卵から蛹までその生態を観察することができる。暖地性のモンキアゲハは年に数回みられる程度であり、山地性の傾向が強いオナガアゲハも、やはり個体数は多くない。また、30年程前はジャコウアゲハもかなり見られたが近年は確認されていない。幼虫の食草であるウマノスズクサも湿地の周りや近くの土手に僅かに見られる。ここからわずか2km程離れた所沢市三ヶ島には発生ポイントがあり、ウマノスズクサの生育によっては今後の発生が期待される。ウスバシロチョウも私が小学6年生の時に友人が一頭採集したことがあるが、その後は確認されていない。 |
ウマノスズクサに産卵中の母蝶
2003.5.11 所沢市三ヶ島
|
|
シロチョウ科 |
春には、モンシロ、スジグロはもとより、ツマキチョウやモンキチョウが多い。キチョウは秋になると個体数を増す。 |
シジミチョウ科 |
西久保田んぼ周辺は、コナラを主体とした雑木が多く、平地性ゼフィルスは一通り見られ、アカシジミとウラナミアカシジミは個体数も多い。ミドリシジミは上流部にハンノキが数本あり、そこが主な発生源となっている。湿地の周辺部には、イボタやカシ類も多く、ウラゴマダラシジミやムラサキシジミも多い。ツツジが少なくなった影響だろうか、コツバメはあまり見かけなくなった。ゴイシシジミやトラフシジミは、まだ健在である。 |
テングチョウ科 |
駐車場付近の水たまりなどで吸水する個体を良く見かける。30年程前は今ほど見かけることもなく、珍しい種類の一つであったが、近年は個体数も多い。 |
マダラチョウ科 |
春と秋の移動のシーズンに立ち寄るものが見られるが、繁殖はしていない。 |
タテハチョウ科 |
東京近郊ではほとんど見られなくなったオオムラサキもまだまだ健在である。西久保田んぼ周辺には樹液の出るクヌギなどが少ないため、成虫を見る機会は少ないが、付近のエノキから越冬幼虫は結構見つかる。コムラサキは狭山丘陵では少ないながらも確認されているが、この周辺では未確認。ヒョウモン類は、個体数は少ないながらミドリ、オオウラギンスジ、メスグロが見られる。スミナガシも稀に見られる。 |

オオムラサキ(右)とゴマダラチョウの
越冬幼虫 2002.2.2 西久保田んぼ
|
|
ジャノメチョウ科 |
平地性のジャノメ類は一通り見られ、それぞれ個体数も多い。あちこちにススキ原も残っているが、ジャノメチョウは見かけなくなって久しい。また、ヒメジャノメも最近見かけなくなった。 |
セセリチョウ科 |
西久保田んぼ周辺では、ミヤマセセリやキマダラセセリ、ヒメキマダラセセリは個体数も多い。アオバセセリは稀に見かける程度。以前は丘陵内に普通に生息していたホソバセセリは見かけることがなくなった。 |
最近見られるようになった種 |
ここ数年の冬の温暖化傾向は、南方系の蝶にとって勢力範囲を広げるまたとないチャンスなのだろう。クロコノマチョウは、1990年代後半より西久保田んぼ周辺で発生が確認されるようになり、2000年代に入ると確認される個体数も増加し、幼虫や蛹なども確認している。
ツマグロヒョウモンとムラサキツバメも、2000年代に入って確認され始めた。これら3種についてはここ数年、相当な勢いで分布の拡大が報告されている。冬期の暖冬傾向が生息の条件を満たしてきたことと、幼虫が歩道の植栽や街路樹に多用されるパンジーやマテバシイなどを食していることも分布の拡大の要因となっているようだ。
ナガサキアゲハも2006年頃から確認されるようになり、田んぼのユズから幼虫を見出すこともある。
また、外来種の進出も目を見張るものがある。ホソオチョウとアカボシゴマダラは、どちらも人為的に持ち込まれた種とされているが、2007年頃から西久保周辺でも確認されるようになり、アカボシについては、在来のゴマダラチョウよりたくさんの個体を目にするようになった。
|
クロコノマチョウの蛹
2003.9.6 狭山丘陵
|
|
最近見かけなくなった種 |
狭山丘陵周辺から姿を消してしまった蝶が何種類かいる。代表的な種がクロシジミで、丘陵の環境の変化によって姿を消したと思われる。ツマグロキチョウ、アサマイチモンジ、ジャノメチョウ、ホソバセセリも30年程前は西久保田んぼ周辺のあちこちで見られたが、
その姿を見かけなくなって久しい。 |