畳表の見分け方

独断と偏見による畳表の見分け方かもしれませんが、
一、畳屋さんの戯言程度位に参考にしてみて下さい。


先ずもって経糸を見る

糸引き表でも上質なものは麻綿ダブル表より高価なものがあったりと例外はありますが、大体
糸引き表 < 綿綿ダブル < 麻引き表 < 麻綿ダブル < 麻ダブル の順で
上質で高価な畳表になっていきます。

この他に、畳表の目の真ん中にも経糸を通した、三本芯や五本芯なんていうのもあります。

綿二本芯 (糸引き) 経糸に綿糸を使った畳表。下級品〜上級品まで品質に幅があります。選別された良質なイグサで織り上げた畳表は、麻綿ダブルのものより高級な場合もあります。綿糸という性質上、それほど沢山のイグサは織り込めないので、耐久性は麻引きや麻綿ダブルより劣ります。畳床に馴染みが良く、仕上がりが割合綺麗になる事から、下手な麻引き表よりこれを好む畳屋さんもいます。新築のお家の畳は、おおよそ大工さんや大手ハウスメーカーさんなどから叩かれる為か、殆どのお家がこの糸引き表の下級品〜中級品位の畳表がついています。上記の理由で普及率は恐らくナンバー1です。
綿四本芯 (綿綿ダブル) 経糸に綿糸ダブルを使った畳表。正直、使った事がないのであまり確かな事は言えませんが、糸引きと麻引きの中間のクラスと考えて頂いたらいいと思います。こう写真で見ると、織り込みもまずまず、なかなか耐久性もあるのではないでしょうか?偶然、問屋さんから切れっ端を貰ったやつがあったので紹介してみました。恐らくそんなに出回っていないタイプの経糸だと思います。
麻二本芯 (麻引き) 経糸に麻糸を使った畳表。糸引きより経糸が太く、より多くのイグサが織り込める為、概ね耐久性に優れています。最近は麻綿ダブルのタイプが多く、この麻引きシングルのタイプは少なくなった様な気がします。麻糸と一言で言っても、マニラ麻、黄麻(別名さんりん)、化繊麻、ラミコン麻と、実に様々な種類の麻糸があります。一番高級とされるのはマニラ麻で、コシのある硬い畳表に仕上がります。
麻綿四本芯 (麻綿ダブル) 経糸に麻綿ダブルを使った畳表。一般的に高級品とされる畳表がこのタイプの経糸です。結構、価格に幅があり、安い物と高い物を比べると2倍〜3倍以上の差がある畳表もあります。安い物はイグサ(髭の長さ)の長さも短く、赤毛が混ざっていたりしますが、高い物は色味なども優れていて、より多くのイグサを織り込んであり上質な畳表に仕上げているものが多いです。いずれにせよ上の糸引き表などより耐久性に優れ、高級品です。
麻四本芯 (麻ダブル) 経糸に麻糸ダブルを使った畳表です。一番の高級品とされる経糸のタイプがこれですが、麻糸ダブルで織り上げた畳表は珍しく、希少だと思います。主に広島県産の畳表に使用される事が多いように思います。お値段の方も結構張りますが、そのムックリとした仕上がりは何とも言えないものがあると思います。

その次にイグサの長さや織り込み密度による違いを知る

これも例外があって、長けりゃ良いってもんでもない様で、短い草でも実のしっかりと入ったイグサは良いと言われていたりしますが、基本的に長い草で織り上げた畳表の方が、イグサの真ん中の上質な部分だけが使えるため、高級とされています。

当店表替え価格で左から、4500円、7000円、9000円、12500円の畳表です。髭の長さの違いがお判り頂けるかと思います。どうせ髭なんてぶった切っちゃって捨てちゃうんだから、短くたって良いじゃんと思われるかも知れませんが、短い草で織り上げた畳表は、イグサの根元の白い部分が表に多く現れやすくなります。
イグサ農家の人は、刈り取ったイグサを1番草、2番草・・・5番草などと長さによって選り分けて畳表を織り上げる為、概ね下級品は短い草で織り上げ、上級品になる程、長い草で織り上げます。
極端な例ですが、イグサの目の詰まり具合の違いが判ると思います。右の畳表がムックリとしているの対し、左の畳表は平たんに仕上がっています。同じ長さのイグサで織り上げた畳表の場合も、より多くのイグサを織り込んだ畳表の方が、目方もあり上質です。 同じ五八サイズの畳表ですが、イグサの長さの違いにより、こんなに長さが違います。基本的に、新芽の上質なイグサで織り上げた畳表は、焼けてからも黒い筋の発生が少なく、綺麗な飴色に退色していくと言われています。

産地による違いを知る

熊本県 (肥後表) 国産畳表と一概に言っても、その殆どのものが熊本県産畳表だと思います。熊本県の農家の人がイグサを栽培しなかったら、それこそ中国産畳表に頼らざるを得ない状況かな?と思います。下級品〜高級品まで幅広くあり、最近では10年の歳月を掛けて開発した、ひのみどり(有明3号)という品種に人気があります。在来種と比べると若干、割高ですが、ひのみどり草で織り上げた高級品の畳表などは、何とも言えない良さがあると思います。
広島県 (備後表) 宮中や幕府への献上表として、昔から高級品として知れ渡っています。他県産のイグサを移入して織り上げた備後織りと、広島の地で育て織り上げた備後地草の主に2種類があります。備後織りの方は、織機の違いこそある様な気がしますが、価格帯や品質など熊本県産畳表と同じです。しかし、備後で育てた地草物は、他のどの産地のものより高級で、流通量も少ないです。ちなみに、普通織の中で一番の高級品が、この広島県産の地草で織り上げた、備後本口長髭表と言われる畳表で、それこそ、敷き込んでから5年目位に綺麗な黄金色に輝く超一級品です。
岡山県 (備前・備中表) その昔、畳と言えば備後表か岡山表と言われていた位、数多く生産されていましたが、工業の発展と共に年々減少していき、広島県産の地草と同じく、今では非常に数が少ないです。同クラスの畳表を熊本県産畳表と比べた場合、若干お値段が張りますが、品質も高く、使い込む程に何とも言えない艶が増す畳表です。青みの強い畳表と白色系の畳表がありますが、どちらも独特のしっとりとした感じがあります。
福岡県 (筑後表) どちらかというと、花茣蓙などの生産地として有名ですが、近年では博多華織(はかたかおり)などの、畳表のブランド品にも力を入れているようです。草質はやわらかいと言われていますが、艶もあって、良い畳表という話も聞きます。
石川県 (小松表) イグサ栽培の過程で、唯一雪が降り積もるのがこの石川県の小松表です。その影響なのでしょうか?非常に丈夫なイグサとして定評があります。主に、暖房畳などに使われているそうです。
高知県 (土佐表) イグサの葉緑素を特別に固定した、不変色表が有名です。青味が長期間持続する畳表だそうです。
佐賀県 (佐賀表) これも使った事がなく、なんとコメントしていいか分かりませんが、主に、糸引き系の普及品として使われているらしいです。
大分県 (豊後表) 最近、人気のある縁無し畳の畳表(琉球表・青表)の生産地が、この大分県と中国です。青表に限って言えば、案外中国表の方が綺麗だなんていう話も聞きますが、そこはやっぱり国産品、使い込むほど味が出るのは、大分県産の青表だと言われています。何れにせよ三角イグサを二つに裂いて、手織りでオッチラオッチラ織上げる為、お値段が結構張る畳表です。
沖縄県 (ビーグ表) 内陸の畳表と比べると、草質も太く、染土も使わないで織り上げた畳表だそうです。泥染めしない為、独特な風合いで、草も太い事から丈夫な畳表だそうです。
中国 元々、日本の企業が中国の広大な土地と、人件費の安さを理由に、日本からイグサを持っていったのが始まりだそうです。国産品は一農家の人が、一貫してイグサ栽培から製織までするのに対し、中国産はどちらかというと、様々な畑からイグサを工場に大量に集めて、そこで雇われている何人もの人が、織り上げているそうです。特徴はやはり価格の安さだと思います。初期の頃は品質が悪かったですが、最近ではビックリする程、高品質な畳表もあるそうです。