QUADERNO33のメモリ増設に成功しましたので報告します。
くあはその小さい筐体のため、基板にもスペースが無くメモリ増設が困難です。
そのため公式にリリースされている増設方法は、ICカードによるものです。しかし、
この方法ではICカードスロットを使ってしまうので他のカードが使えなくなります。
ある日の定例RTでもこの話題が出て、Mochi-san(SGQ01607@nifty.ne.jp)が
「メモリを二階建てしたら増やせるのでは?」
くあを開けてみると二枚の基板の間にTSOPのDRAMが見え、同じTSOPのDRAMなら
二階建てしても反対側の基板にぶつからないですみそうです。
次にDRAMの制御用信号を調べると、メモリバンク0、1を本体で使用して
バンク2、3が空いていることが判りました。
アドレス、データ信号、電源は二階建てすることで一階のメモリからもらえます。
なおこの改造をすると当然の事ながらオリベッティ社の保証は得られなくなります。
1.使用する材料
4Mbit-DRAM 8個
たとえば uPD42S4400LGS-A80-9JD NEC
TC51V4400AFTL-80 TOSHIBA
HM51W4400BLTT-8 HITACHI
等が使えます。要は 1M x 4bit, アクセスタイム80nsec, 3.3V動作,
TSOP-TYPE II, スローリフレッシュタイプ ということです。
それにジャンパー線、はんだ 少々。
あと、ジャンパー線を固定するボンドがあるとベターです。
2.工具
本体のねじをはずすための+ドライバー
はんだゴテ(先の細いもの)
ピンセット
ラジオペンチ
ルーペ(半田付けの状態確認用、目に自信のあるひとはいらない)
測定器は、導通チェック用のテスターがあれば十分です。
3.回路は以下の通りです。
アドレス、データ、電源、グランドは省略しています。
部品番号の意味は例えば(U68')の場合、すでに基板にU68というシルク印刷が
ついてるDRAMがあり、その上に実装する事を表しています。
CAS2H#
[R10]────────────────┐
│
CAS2L# │
[R6 ]───────────────┐│
││
RAS2# ││
[R9 ]────┐ ││
│ ┌────┐ ││
│ │ U68' │ ││
│ 4│ │23 ││
├──┤RAS CAS├──┤│
│ │ │ ││
│ │ │ ││
│ └────┘ ││
│ ┌────┐ ││
│ │ U69' │ ││
│ 4│ │23 ││
├──┤RAS CAS├──┘│
│ │ │ │
│ │ │ │
│ └────┘ │
│ ┌────┐ │
│ │ U70' │ │
│ 4│ │23 │
├──┤RAS CAS├───┤
│ │ │ │
│ │ │ │
│ └────┘ │
│ ┌────┐ │
│ │ U71' │ │
│ 4│ │23 │
└──┤RAS CAS├───┘
│ │
│ │
└────┘
CAS3H#
[R39]────────────────┐
│
CAS3L# │
[R40]───────────────┐│
││
RAS3# ││
[R41]────┐ ││
│ ┌────┐ ││
│ │ U72' │ ││
│ 4│ │23 ││
├──┤RAS CAS├──┤│
│ │ │ ││
│ │ │ ││
│ └────┘ ││
│ ┌────┐ ││
│ │ U73' │ ││
│ 4│ │23 ││
├──┤RAS CAS├──┘│
│ │ │ │
│ │ │ │
│ └────┘ │
│ ┌────┐ │
│ │ U74' │ │
│ 4│ │23 │
├──┤RAS CAS├───┤
│ │ │ │
│ │ │ │
│ └────┘ │
│ ┌────┐ │
│ │ U75' │ │
│ 4│ │23 │
└──┤RAS CAS├───┘
│ │
│ │
└────┘
*.DRAMのピンアサインは次のとおりです。
┌──┬─┬──┐
1 │ D4 └─┘GND │ 26
2 │ D5 D4 │ 25
3 │ WE# D3 │ 24
4 │ RAS# CAS# │ 23
5 │ A9 OE# │ 22
│ │
│ │
│ │
9 │ A0 A8 │ 18
10 │ A1 A7 │ 17
11 │ A2 A6 │ 16
12 │ A3 A5 │ 15
13 │ VCC A4 │ 14
└───────┘
4.作業
下準備として、DRAMの足の加工をします。足がもげないよう注意しながら
ラジオペンチで4PIN(RAS#)、23PIN(CAS#)以外の足を垂直に下方向に曲げます。
┌───────┐ ┌───────┐
┏┥ ┝┓ => ┏┥ ┝┓
┛└───────┘┗ ┃└───────┘┃
横から見た所
まずQ33を分解し二枚の基板のうちの大きい方の基板を用意します。
基板の上面(HDDが付いてる面)にDRAM、及び中央付近に抵抗R4,R19など
これから接続する予定の抵抗が見えるはずです。
基板にすでに実装されているDRAMの上に先程用意したDRAMを同じ向きになる
ように重ねます。位置合わせをして、対角の足(例・1PIN、14PIN)を
半田付けで仮止めします。
位置がずれてないのを確認したら4,23PIN以外の足を下のDRAMに接続します。
┌───────┐
┏┥ U68’ ┝┓
┃├───────┤┃← 半田で下のDRAMに接続
┏┥ U68 ┝┓
─┻┴───────┴┻───
回路図に従ってRAS#とCAS#の配線をします。
正しく配線、半田付けできたかテスターで導通チェックしてできあがり。
長いジャンパー線はボンドで固定した方がいいでしょう。
さて以上の作業を民間人で可能かということですが、1.25mmピッチのDRAMの足に
ジャンパー線を2本はんだ付けする技術レベルを必要とします。0.5mmピッチの
QFP-ICにジャンパーを飛ばすのに比べればはるかに楽です。
5.BIOS
MS−DOSはそのままでは増設したメモリを認識してくれません。
以上の作業の後、くあを仮組みし電源を入れてセルフチェックのメモリテストを
してもまだ4096 KBしか認識してないはずです。
これはBIOSがメモリコントローラのBANK2とBANK3の設定をしてないためです。
この設定はDOSが立ち上がる前にしておく必要があるので、BIOSにパッチを
あてます。
そしてメモリテストで
Base Memory 640 KB
Extended Memory 7424 KB
Shadow Memory 128 KB
Total Memory 8192 KB
と表示されたらできあがりです。電源をいれても何も表示しなかったり、Totalが
8192 KBにならない場合は半田付けをもう一度確認しましょう。
DOSのMEMコマンドを実行すると、以下の様になりました。
メモリの種類 合計 = 使用 + 空き
---------------- ------- ------- -------
コンベンショナル 640K 177K 463K
上位 0K 0K 0K
予約済み 128K 128K 0K
XMS メモリ* 7,424K 2,899K 4,525K
---------------- ------- ------- -------
全メモリ 8,192K 3,204K 4,988K
全 1MB 以下メモリ 640K 177K 463K
全 EMS メモリ 1,408K (1,441,792 バイト)
空き EMS メモリ* 864K (884,736 バイト)
この改造による副作用はメモリを増やした分、消費電流が若干増加します。
ただし同時に4バンクをアクセスすることは無いため、リフレッシュ電流が
増えるだけです。これはバッテリーでの動作時間にはあまり影響を与えない
でしょう。
しかしサスペンド状態ではリフレッシュ電流がきいてきますので、保持時間
が30%程度短くなるでしょう。
6.メモリ改造オフラインミーティング
OUGで2回ほど改造オフをしましたが、参加者の成功率はあまり良くあり
ませんでした。メモリの足を折るひと、バラックでは動いたものの組み上げ
たら動かなくなるなど屍累々といったありさまでした。
メモリの足は折れやすいので、十分注意して加工しましょう。
また、私が見た失敗例で一番多い不良原因は、半田付け不良でした。
特に二階建てのメモリの上下を接続する半田付けが、一見つながっているよ
うに見えて実はつながってないというケースです。これはテスターで上下の
ピンに導通があるかどうかで確認できますが、テスターのリードを強く押し
すぎた為にテスターをあてている間だけ導通してたなんて例もありますので
注意しましょう。
OUG 特殊工作部隊 ふーみん
VIRTUAL_DESIGN_MUSEUM Index Mario Bellini
QUADERNOの筐体デザインをしたMario Bellini氏の作品を紹介しています